

「介護」という言葉は、誰にとっても身近な話題になりつつあります。ご自身のキャリアとご家族の介護をどう両立していくか、不安に感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
仕事と介護の両立を支える制度として「介護休業」や「介護休暇」があります。これらの制度について、言葉は聞いたことがあっても内容は良くわからないという方も多いと思います。
この記事では、「仕事と介護の両立」の鍵となる、「介護休業」と「介護休暇」について掘り下げていきたいと思います。
結論から言うと、介護休業と介護休暇は名前は似ていますが全く別の制度です!
どちらも「育児・介護休業法」という法律で定められており、労働者が要介護状態の家族(*)の介護をするための制度である点は共通しています。また、どちらの制度も、正社員やパート・アルバイト、契約社員などの雇用形態によらず、法律で定められた条件を満たせば誰でも取得できます。
しかし、取得できる日数や取得単位などは大きく異なります。
それではここから、介護休業と介護休暇の違いについて詳しく見ていきましょう!
(*) 要介護状態とは、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態です。
また、対象家族とは、配偶者 (事実婚を含む) 、父母、子(養子含む法律上の親子関係がある子)、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。
「介護休業」と「介護休暇」の違いは以下の表のようにまとめられます。
| 介護休業 | 介護休暇 | |
|---|---|---|
| 対象者 | 要介護状態の対象家族を介護する男女の労働者 ※パート・アルバイトで一部例外あり ※労使協定により対象外となる労働者 |
要介護状態の対象家族を介護する男女の労働者
※労使協定により対象外となる労働者 |
| 取得可能日数 | 対象家族1人につき、通算93日まで | 対象家族が1人の場合:年5日まで 対象家族が2人以上の場合:年10日まで |
| 取得単位 | まとまった日数(3回まで分割取得が可能) | 1日または時間単位 |
| 申請方法 | 原則、休業開始予定日の2週間前までに書面等で会社に申請 | 当日の電話など口頭での申し出も可能 ※休暇の取得方法は、会社の就業規則によって異なる |
| 給付金 | 一定の要件を満たせば雇用保険から「介護休業給付金」が支給される | なし |
| 利用ケース | 介護サービスの手配や地域包括支援センター等への相談など、ある程度まとまった期間が必要なケース | 家族の通院の付き添いや、介護サービスの手続きなど、突発的・短期的なケース |
「介護休業」も「介護休暇」も、原則は要介護状態の対象家族を介護するすべての労働者が取得可能ですが、労使協定を締結している場合に、表1に記載した条件で対象外となるケースがあります。
また、パート・アルバイトの場合、「介護休業」を取ろうとする日の時点でその日から「93日を経過した日」から「さらに6か月経過する日」までの間 に雇用期間が満了し、その契約が更新されないことが分かっている場合は対象外です。
「介護休業」と「介護休暇」は、取得できる日数や取得単位が異なるため、状況や目的によって使い分けることができます。
「介護休業」は通算93日まで取得可能なため、介護サービスの手配や地域包括支援センター等への相談など、長期的な介護体制を整えるケースで活用できます。
「介護休暇」は1日または時間単位で取得可能なため、家族の通院や介護サービスの手続きなど、突発的・短期的なケースで活用できます。
また、「介護休業」では、一定の条件を満たした場合に雇用保険から「介護休業給付金」を受け取ることができます。
より詳しく「介護休業」と「介護休暇」について知りたい場合は、厚生労働省の特設サイトにてまとめてありますので、参考にしてみてください。
介護休業制度特設サイト|厚生労働省
ここまで介護休業と介護休暇の違いについて見てきましたが、休業と休暇の違いはどこにあるのでしょうか?
結論としては、休業と休暇のはっきりとした区別は存在しません。
介護休業は数十日といったまとまった日数を取得できますが、介護休暇は通常1日か数日単位で取得されます。
一見、介護休業と介護休暇の違いは長さにあるように思えますが、必ずしも「休業=長いお休み」、休暇=「短いお休み」というわけではありません。
例えば、会社側の都合で働けなくなった時のお休みは1日だけの取得であっても休業と呼ばれることが多く、労働基準法においても休業と呼ばれています。
介護休業と介護休暇の違いが全ての休業と休暇の違いに対応しているわけではないので注意が必要です。
休業と休暇の違いについては、弊社別サイトの以下ブログ記事「4-1.休暇の概要:休暇って一体何?」もご覧下さい。
休暇と休日の違い、どれだけ知ってる?ポイントを絞ってわかりやすく解説! | タイムカード・勤怠管理のiPadアプリ 【タブレット タイムレコーダー】
なお、弊社の勤怠管理システム「キンタイミライ」でも介護休業や介護休暇への対応が可能です。
介護休業および介護休暇は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(通称:育児・介護休業法)」によって定められています。
・(介護休業の申出)
第十一条 労働者は、その事業主に申し出ることにより、介護休業をすることができる。ただし、期間を定めて雇用される者にあっては、第三項に規定する介護休業開始予定日から起算して九十三日を経過する日から六月を経過する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない者に限り、当該申出をすることができる。
(以下略)
・(介護休暇の申出)
第十六条の五 要介護状態にある対象家族の介護その他の厚生労働省令で定める世話を行う労働者は、その事業主に申し出ることにより、一の年度において五労働日(要介護状態にある対象家族が二人以上の場合にあっては、十労働日)を限度として、当該世話を行うための休暇(以下「介護休暇」という。)を取得することができる。
2 介護休暇は、一日の所定労働時間が短い労働者として厚生労働省令で定めるもの以外の者は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働省令で定める一日未満の単位で取得することができる。
(以下略)